シリル化によるOHの保護(TMS、TES、TBS、TIPS、TBDPS:シリル系保護基)

概要

シリル化はOHの保護に利用される代表的な手法である。脱保護は酸によって行われる。

かさ高いシリル系保護基は安定性が高く脱離しにくいため、保護基を外し分ける際に重宝する。逆に、かさの小さいものは安定性は低い代わりに脱離が容易であり、用途によって使い分けるのが効果的である。

シリル系保護基の一例(右に行くほどかさ高い)

特によく使われるシリル系保護基としてTES、TBSがあるが、第二級OHをTBSで保護した場合、脱保護されにくくなるという点は注意が必要である(第一級であれば問題ない)。

反応機構

まずOHのプロトンを塩基が奪い、アルコキシドが生成する。これがケイ素原子に攻撃することで脱離基Xが外れ、目的のシリル化体が生成する。

ケイ素原子にはアルキル基が3つ結合しているが、反応はSN2で進行する。これは、Si-C結合の距離がC-C結合の距離よりも長く、立体障害がC原子の場合より小さいためである。

近年における使用例

氷冷したジクロロメタン60 ml に原料 2.07 g (5.71 mmol)を溶解させ、2,6-lutidine 1.00 ml (8.63 mmol)とTESOTf 1.50 ml (6.63 mmol)を加え、0℃を維持したまま1時間45分攪拌した。反応後、氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒留去した。その後カラムで精製し、目的物を94%の収率で得た。

-78℃のジクロロメタン0.4 ml に原料 2.5 mg (2.7 μmol)を溶解させ、2,6-lutidine 0.04 ml (0.35 mmol)とTBSOTf 0.01 ml (0.044 mmol)を加え、-78℃を維持したまま1時間30分攪拌した。反応後、氷冷した飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、酢酸エチルで抽出し、硫酸ナトリウムで脱水した後、溶媒留去した。その後カラムで精製し、目的物を81%の収率で得た。

 

※いずれも2,6-lutidineが塩基として作用する

試薬価格

※下記は一例です。販売会社、時期、グレードなどによって価格は異なります。

TMSクロリド:100 ml /5,000円程度(CAS:75-77-4)

TESクロリド:25 g /10,000円程度(CAS:994-30-9)

TESトリフラート (TESOTf):10 g /10,000円程度(CAS:79271-56-0)

TBSクロリド:25 g / 10,000円程度(CAS:18162-48-6)

TBSトリフラート (TBSOTf):25 g / 20,000円程度(CAS:69739-34-0)

TIPSトリフラート (TIPSOTf):10 g /10,000円程度(CAS:80522-42-5)

TBDPSクロリド:23 ml /10,000円程度(CAS:58479-61-1)

参考文献

基本文献

J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 17, 6190–6191.

使用例

①, ② Org. Lett. 2016, 18, 9, 2232–2235.

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