パリック・デーリング酸化(アルコールの酸化)

概要

1級OH、2級OHを酸化し、アルデヒド、ケトンを得る手法の一つ。

室温や氷冷下といった温和な条件で反応が可能である。

スワーン酸化などと比べ副反応も起こりにくい。

反応機構


まず、SO3・PyによりDMSOが活性化され、中間体Aが生じる。

次に、中間体Aの硫黄原子に原料であるOHが求核攻撃し、中間体Bが生成する。

中間体Bのプロトンをピリジンが受け取ってできる中間体Cから、硫酸イオン(SO42-)が脱離し、中間体Dとなる。

塩基であるEt3N中間体Dからプロトンを奪い、中間体Eが生じる。

中間体Eにおいて、プロトンを引き抜かれた炭素原子が再びプロトンを奪うとともに、ジメチルスルフィドアルデヒドが脱離し、反応が完了する。

近年における使用例

 原料 4.86g (19.4 mmol)をCH2Cl2 45 mlに溶かして氷冷した。ここにDMSO 7.72 ml (8.49 g, 109 mmol)、Et3N 14.3 ml (10.4 g, 103 mmol)を加え、再び氷冷した。SO3・Py (9.26 g, 58.2 mmol)を氷冷しながら滴下し、氷冷下で30分攪拌。その後室温で2.5時間攪拌。飽和NH4Claq 70 mlでクエンチし、CH2Cl2で分液。その後カラムして目的物を得た。

DMSO 1.56 ml (22.0 mmol, 13.6 eq)を4 mlのCH2Cl2に溶解させたSO3・Py 834mg (5.24 mmol, 3.5 eq)に加え、30分攪拌した後、diisopropylethylanime 1.56 ml (8.96 mmol, 5.5 eq)と原料 257 mg (1.62 mmol)を5.5 ml のCH2Cl2に溶解させて加え、90分攪拌。反応後、0.1NのHClでクエンチし、CH2Cl2で抽出。溶媒留去して目的物のcrudeを得た。(本文中では精製せずに次の反応に用いているが、精製したい場合はカラムの必要あり)

試薬価格

※下記は一例です。販売会社、時期、グレードなどによって価格は異なります。

SO3・Py:100 g / 12000円程度(CAS:26412-87-3

DMSO:100 g / 500円程度(CAS:67-68-5

Et3N:100 ml / 5000円程度(CAS:121-44-8

参考文献

基本文献

J. Am. Chem. Soc. 1967, 89, 5505-5507.

Synthesis, 1990, 857-870.

使用例

Org. Lett. 2015, 17, 6242-6245.

Org. Lett. 2020, 22, 1510-1515.

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