概要
1級OH、2級OHから臭化アルキルを得る手法の一つ。
副生成物としてリン酸や臭化水素が発生するため、酸に弱い化合物の臭素化にはあまり向かないが、氷冷した大過剰の塩基性溶液を用意し、素早く中和するなどの工夫で解決を図ることもできる。
また、SN2反応で進行するため、立体構造の変化には注意が必要である。
反応機構
まず、OHがPBr3に対して求核攻撃してBr–が脱離するとともに、中間体Aが生成する。ここに先ほど脱離したBr–が求核攻撃を行い、SN2反応が起こる。これにより、目的の臭化アルキルと、Br2P-OHが生成する。
Br2P-OHは水によってクエンチの段階で分解し、亜リン酸とホスホン酸(平衡関係)と臭化水素が発生する。
※副生したBr2P-OHも、同様の機構でさらに2当量のアルコールと反応しうる。(PBr3は化学量論量用いられる事が多く、その場合は大半がBr2P-OH止まりになっていると思われる)
※SN2反応による立体の変化と、クエンチによる酸の発生には注意が必要である。
近年における使用例
氷冷したtoluene 2mlに、アルゴン下で原料 10.9 mmolを加え、続いて12.1 mmol の PBr3 をゆっくりと加え、室温で30分攪拌した後、100℃で2時間攪拌した。反応後、氷浴で氷冷してから氷水に反応溶液を注ぎ、brineで洗浄するとともにジエチルエーテル10ml ×2で抽出した。これをMgSO4で脱水し、溶媒留去することで目的物の臭化アルキルのcrudeを得た。
試薬価格
※下記は一例です。販売会社、時期、グレードなどによって価格は異なります。
PBr3 : 300 g / 4000円程度 (CAS:7789-60-8)
参考文献
基本文献
Org. Synth. 1943, 23, 88.
Org. Synth. 1943, 23, 32.
使用例
ACS Omega, 2019, 4, 4276−4295.